コメンタリ#2


映画『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』予告

▼実写版の『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』を観た。主演の阿知賀メンバー5人による舞台挨拶つきの回である。前日に知人と「咲-Saki-阿知賀編episode of side-A観に行きましょうよ」「行きましょう」「そうしましょう」「やるぞ」「よっしゃ」という話になり、「舞台挨拶回に空席があるんですが……」「やりますか」「やりましょう」「やるぞ」という話になった。

▼最後に舞台挨拶のある上映に行ったのはいつだったかと記憶を掘り返すと、13年前であることがわかった。当時何で行ったのかは思い出せない。そのとき観た作品がひどくつまらなかったことだけ憶えている。タイトルは伏せる。

▼さておき『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』である。『咲-Saki-』については無印も阿知賀編もシノハユも当然のごとく抑えている。過去に同人誌も2冊出した。戒能プロが遠野の山奥に巣喰う屍人の村を強襲しに行く超伝奇二次創作(馬鹿すぎる)、『退魔雀士 戒能良子 -遠野の山姫編-』はその1冊である。なお2作目の構想として、戒能プロvs松実露子夫人(死そのものを纏う最強の屍人遣い)本という、『魔界行』の読み過ぎもいいところな企画をかつて温めていたのだが、『咲-Saki-』本の新刊をその後出すこともなく現在に至り、当時の企画骨子は皆さんに見えないところでやっている乃木坂の生モノ二次創作に回収されたりした。

上記については『退魔雀士 戒能良子』シリーズ二作目を書こうとするも結局2作目自体を出さずお蔵入りとなった、といった趣の話であり、当時の構想をここで開陳するなどダサい行為にも保土ケ谷区なのだが、自らの寿命から差し引いた時間の分だけ未来を「視る」ことができる公安霊能捜査官・園城寺怜(23歳・狐憑き)と、最強のタクティカルコンバットイタコ・戒能良子(傭兵)がバディを組み、大阪〜神戸〜吉野を闊歩し、レイラインを巡る日本闇社会とCIAの暗闘に身を投じる話を当時のぼくは書こうとしていた。『魔界行』まんまやんけ。 

魔界行―完全版 (ノン・ノベル)

魔界行―完全版 (ノン・ノベル)

 

 ▼『魔界行』マジで読んでください。特にウチの本なんかが好きな物好きの方はマストです。とはいえ、これを読まれると「あいつ……影響を受けすぎでは……」となり、あらゆる元ネタがバレまくる恐れもあるので、やっぱ読まなくていいです。良い本と良い曲は訊かれでもしない限り人に教えないに限ります。

 ▼実写版『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』の話に戻る。結論からいうとどえらい面白かった。漫画の実写化というと何かと敬遠されがちだし、ぼくも進んで観ようとは思わないが、中々どうしてよくできた実写化だったといえる。原作の『咲-Saki-』は超伝奇異能力麻雀バトル漫画だ。ゆえに麻雀で戦う。戦いの段取りとしては、インターハイ本戦が先鋒〜大将の5人1チームどうしによるトーナメント制だから、どうしたって尺が長くなり、映画の尺でやると間延びするに決まっている。退屈になりはしないだろうか。そんな具合に、観る前のぼくは少しばかり心配に思っていたのだったが、実際のところ、全然そんなことはなかった。

 ▼なぜか。要因は色々あるように思う。まず一番おいしいところから映画のストーリーをスタートさせたのが大きいと思う。インターハイ本戦に至るまでの前段(幼少期のくだりとか地区予選のくだりとか)は全部テレビ放映回に任せ、映画本編はいきなりインターハイ本戦から始まった。これは上手いと思った。初見の観客への気遣いなど皆無なのである。

 ▼実写版『あさひなぐ』のストーリーが異様に眠たかった要因を裏返すと、そのまま実写版『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』の面白さの要因となるように思う(片方の作品を悪い例として引き合いに出してもう片方の作品を持ち上げるのは感想として最低だと思っているが、引き合いに出さずにはいられなかった。いまどき「わたし、東島旭! 今日から高校1年生!」をファーストシーンに持ってくる映画がありえるだろうか)。

 ▼つまり、実写版『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』は原作のストーリーを1から馬鹿正直になぞらなかった。それでいて初見殺しでも何でもないふうに作られていた。驚くべき塩梅の良さである。この話は映画のつくりそのものの話であり、ぼくが原作既読者である点と全く無関係だ。「5人は同じ高校の麻雀部に所属する幼馴染みどうしであり、夏の全国大会に出場している。周りには何やら強そうな高校生雀士ばかりがひしめき合っている。前途は多難だ。そして、5人が"もう一度遊びたい"と願う幼馴染みの原村和と相まみえるためには、高い壁である準決勝を勝ち抜き、決勝戦まで駒を進めなければならないのであった……」映画本編を楽しむにあたり、観客はこれだけ理解できれば充分である。そして実写版『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』は、それらの基本的な情報を観客に対し理解しやすいようストーリーを組んでいた……というより、原作がそういうふうに話を組んでいたといった方が正確だろう(この映画は原作のストーリーラインをかなり忠実になぞっているためだ)。

 ▼原作のストーリーを1から馬鹿正直になぞらないことによって、この映画は原作の一番おいしいところから映画のストーリーをスタートさせることに成功した。長編漫画の実写化ってこうやるべきなんじゃないの? というお手本になりえるアプローチだとぼくは思う。原作において一番盛り上がるくだり(この映画でいうと準決勝の先鋒戦〜大将戦)をたっぷり丁寧に描けるからだ。

 ▼映画の尺においては、スケールの長いエピソードの積み重ねよりも、いかに序盤で助走を終えて観客を物語の世界に引き込むかが重要であると思う。無論、そうでなくとも良い映画は沢山ある。が、面白い映画の定型のひとつとして、「助走期間をさっさと終えて、まずは最初のおいしいところを観客に見せる」というのがあるのは間違いの無いことであるように思う。

 ▼映画本編。二回戦すらさっさと終えて、いきなりの準決勝である。スピード感がすごい。それでいてちゃんとストーリーが入ってくる。端折っているわけでは決して無い。むしろかなり丁寧だ。取りこぼしている原作のシーンなど無いのではないか?(全コマ映像に起こしているのでは?) と思うほどだったのだが、実際のところどうだったのかは識者に任せる。

 ▼準決勝のくだりを観ていて思った。アニメにあった「引き」がない。当然だ。映画だからである。「引き」って何のこと? というと、アニメBパート終わり際の「引き」である。何か止め画とかになって、『SquarePanicSerenade』のイントロが流れ出すアレのことだ。アレがないだけでテンポとスピード感が異常に良くなる。これにはびっくりした。盛り上がる展開がノンストップで60分以上続く(60分以上というのはあくまで体感なので実際のところどうだかは知らない。印象批評もいいところである最悪な感想であり、本来であればこういう感想は述べるべきではないと思う)。


映画『咲-Saki-阿知賀編 episode of side-A』予告 宮永照ver

 ▼宮永照役・浜辺美波の顔の整い方が尋常ではない。カットの構図的に、真正面から彼女のスンとした真顔(超顔が良い)を捉えるものが数多くあり、その度に馬鹿でかいスクリーンに大写しにされた彼女の顔のあまりの美しさに気が狂いそうになった。梅田ブルク7のいちばんデカい箱で観れて良かった。本当に。

 ▼園城寺怜役・チームしゃちほこ、咲良菜緒が良かった。特に「トリプル」からのくだりにおいて、汗で湿る前髪の隙間から覗く死魚の瞳とでもいうべき芝居が最高に良かった。超伝奇×和製ホラーという趣であり、ぼくらの大好物である。前述の咲-Saki-未刊二次創作本で書きたかった園城寺怜はこういう園城寺怜だ。何か人生における願望のひとつが唐突に漫画の実写化映画で叶えられた。人生何があるかわからんもんである。

 ▼松実宥役・SUPER☆GiRLS、渡邉幸愛の芝居がマジで良かった。宥姉の空気感まんまである。あれにはさすがにびっくりした。

 ▼高鴨穏乃役・桜田ひよりの良さは言うまでもない。ジャージの下にスカートを穿いているかいないかなどこの際些細な問題である。

 ▼花田煌役・矢野優花の存在感が花田煌そのもの、というか、声音が新井里美そのものなので椅子から転げ落ちて頭を床で強打し死んだ。どうなってるんだあれ。

 ▼これは最も強調したいことなのだが、大星淡役のキャラクターデザインにまつわる解釈には当初のキャスティング発表時から驚かされた。原作のキャラクターデザインは漫画漫画した金髪である。それを実写化にあたり、明るめの茶髪として翻案したのはいかにも現代的で良い。作中のリアリティラインが良い具合に抑制され、かつ原作のキャラクターデザインから受ける印象も損なわない。兎にも角にも異常に塩梅が良いキャスティングだ。夢アド、志田友美の芝居も良い。

 ▼上映後、一緒に観た知人が話していたのだが、リザベーションをまんま実写でやるにあたり普通に和製ホラーっぽい演出になっていたのが良かったとのこと。「普通に怖いでしょあれ」とも。確かに、能力の特性を考えるとストレートな表現ともいえる(いくら何でもオカルトが過ぎるでしょ)。あらゆる漫画表現の翻案において、何もかも正解しかないように思われる。

 ▼それにしても、メチャクチャ顔の良い女が一度に20人も出てきてイチャつきはじめる映画の何と贅沢なことだろうか。お子様ランチもかくやという映画である。

 ▼丁度個人的にも二次元コンテンツより三次元アイドル(坂道)がグイグイきているタイミングであり、このタイミングで『咲-Saki-阿知賀編episode of side-A』を観れたのは非常に良かった。抵抗なくすんなりと入れた要因のひとつとして、漫画の実写化とあまり意識せず、メチャクチャ顔の良い三次元の女の映画としてこの作品を観られたからなのかもしれない。

 ▼アイマスHTML5のブラウザゲーとして完全新作を出すらしい。完全新作なので新キャラによる新シリーズであるとなお良いと思う。シンデレラガールズが企画された背景には48グループの存在があったことはおそらく否定のしようがなく、リリース年である2011年は、オリコンが当年を「アイドル戦国時代」と定義した年である。そういう意味でいくと、2018年にリリースされるアイマス新作がどうなるのか、という想像を巡らせるのは楽しい。既存キャラでの新展開でした、ちゃんちゃん、で終わる可能性も当然あるが、やはり当世っぽく坂道っぽいアイマスはちょっと見てみたいなという気がする。淡い期待に過ぎないが。

 ▼デレステに出てきた乙倉悠貴(SSR)の衣装が乃木坂46パロディの塊(ガールズルール+扇風機+バレッタ)であることは周知の事実である。が、デレステの世界観(および色彩感覚)において乃木坂46パロディはイマイチマッチしていないな〜と感じたのも事実であり、そういう意味で坂道っぽい風合いの新しいアイマスは是非とも見てみたい。そんなのがもし出てきたらドンドコ同人誌書いちゃうぞ。

 ▼乃木坂がデビューして7年、後発グループの欅坂が爆売れしたのがここ1〜2年の出来事なのである。そろそろ坂道フォロワーっぽい二次元アイドルコンテンツが出てきても良い頃合いだと思うのだが、どうだろうか。 

 ▼伊藤万理華写真集出さないうちに乃木坂卒業しちゃうか〜〜〜、マジか〜〜〜。と思っていたら卒業後に写真集が出ることになったという。さすがにびっくりした。

 ▼以前に京都の北野天満宮でやっていた彼女の個展に行ったらポートレートがどれもこれも素晴らしくてひっくり返って死んだ。パシッと『装苑』っぽい服を着て長方形の額縁に収まる彼女は、いかにもといった具合に絵になっていたからだ。ゆえに、写真集出さないまま卒業しちゃうのマジか〜〜〜、となったわけである。さすが中学生から『装苑』を愛読している人間は違う。

 ▼伊藤万理華×益昌大廈とは恐れ入った。あまりに正解すぎる。解釈の一致。

 ▼それにしても、帯文の「香港に降り立つ」という表現が何とも超伝奇ノベルスっぽくて笑ってしまった。菊地秀行の本のあらすじかよ。

 ▼秋元康については作詞のエライおじさんということ以外、特に何の感情も持っていないが、坂道の子の写真集をウキウキ気分で買って帰って書店のビニール袋から取り出すと、漏れなく彼の微妙な帯推薦文(熱量常にゼロ)を目にする羽目になり、何とも微妙な気分にさせられる。重ねて言うがぼくは秋元御大に対し何の感情も持っていない。唯一、あの熱量ゼロの帯推薦文だけは何とかならんかな、少なくともアガらんなぁ、というのは思っている。本人は書いておりません、ゴーストライターが考えました、と言ってくれた方がまだ救われる程である。

 ▼伊藤万理華という存在のヤバさを端的に表す文言をチョイスするならば、「長濱ねるがこの世で最もリスペクトする女」という一行しかありえないのだが、しかし長濱ねるにリスペクトされるというのは凄まじいスケール感である。長濱ねるに関しては同性(のくだらない人間)が嫌えば嫌う程、彼女が我々と同じステージに立っていない感が強調される節があり、してみるに、そんな彼女にリスペクトされるというのはとんでもないレベルの話である。どういう人生を生きれば長濱ねるにリスペクトされうるのか、ぼくは全然想像がつかないし、デザイナー一家に育ち、幼い頃からファッションとは何かという薫陶をたっぷりと受けて育った彼女の人生を、工作機械メーカー営業の息子であり、現サラリーマンであるぼくは全くもって想像することができない。グループ卒業後、彼女が知人である著名人のインスタストーリー(あまりにハイセンスなファッションに身を包んだ人たちが集う飲み会の様子を映したもの)に出ていることが話題になった際、ファンの1人が「すげ〜、住む世界が全然ちげ〜」みたいなことを言っていたが、あれは中々どうして当を得た感想であったように思う。アイドルを推していて思うのは、他者の人生を想像することの不可能性だ。アイドルになるという決断・選択をする人間の人生を、ぼくはどうやっても想像することができない。それが他者という存在の正しいあり方であるように思うし、そうあるべきだとも思う。だからぼくはアイドルが好きだ。自分の人生の立ち位置から見上げるくらいで丁度良い。

 

🇭🇰 #エトランゼ#étranger#photobook

伊藤万理華1st写真集『エトランゼ』officialさん(@marikaito_etranger)がシェアした投稿 -