コメンタリ#1

▼あれこれしている間に年が明け、2018年になった。2010年代もいよいよ終盤に入り、かつての2000年代といま現在を隔てる距離感とでもいうべき、そういった何かについて考えるようになった。『マルドゥック・ヴェロシティ』1巻初版が発行されてから早12年、『虐殺器官』Jコレ版の初版が発行されてから早11年が経過しているのである。大変なことだ。

▼昨年末のC93にて、新刊『Ordinary346』の2巻と3巻を発行した。お陰様で新刊の現地持込分は全完売、メロンブックスの通販も即時完売という結果となり、引き続きご好評を頂き嬉しい限り。1巻が百合とエスピオナージに全振りした内容であったのならば、2巻と3巻はバイオレンスとアクションに全振りした内容となった。女と女の静謐な百合どころか、次々と異常者が現れては暴虐の限りを尽くし死を撒き散らす、みたいな内容になり著者本人である自分自身がいちばん面食らった。1巻の読み味を気に入って頂いた方に2巻3巻が受け容れられたか(もしくは受け容れられなかったか)、結構気になっている(感想は逐一エゴサして見ています)。

【C93】「【C93新刊】「Ordinary346(2)(3)」本文サンプル」イラスト/渡辺零 [pixiv]

▼2巻と3巻合わせて製作期間が2週間と少々しか無かったのは個人的にもやはり心残りで、あそこをもっとああできたなとか、もっと丁寧に処理できた箇所があったなとか、そんなことばかり考えてしまう。ま、同人屋なんてみんなそんなもんだよね、というのはありつつも。

▼雨水龍先生の装画(特に3巻のフレちゃんの表情よ)が兎角すばらしく、事前の表紙打ち合わせで「3巻のフレちゃんの表情どうします?」という話になり、ディレクションとしては「多少悪い顔してても問題ないです。ありもしないドラマのノベライズという体なので、フレちゃんがお芝居で人殺しの顔をしていても良いと思いますし、それに3巻まで付き合ってくれる読者の方であれば多少原作から乖離していても受け容れてくれると思います」みたいな話をこちらからしたと記憶している。そういった経緯を経て執筆に移った結果、作中のフレちゃん(両親が仏軍エリート部隊の凄腕傭兵)の残虐度が2000000%増しになったのでちょっとびっくりした。あの表情の印象にグイッと引っ張られてしまった。猛スピードで本文を打鍵しつつ「じゃーね、バイバイ。天国に行けるといいね」という意図しない台詞(流れとしては自然なもの)がスルッと出力されたときはさすがに「こういうこともあるのか……」となった。面白いこともあるもんすね。また、ガチッと嵌まった星崎先生の3巻装丁の印象にも「これはガチの殺し合いをやらんとあかんやつや」と引っ張られました。

▼とりわけアーニャちゃんの二挺拳銃戦闘術や武器のカスタムなど、ガンアクション監修を担当頂いたHK15さん発のアイディアがなければ3巻のアーニャちゃんvsフレちゃんのタイマンバトル(ガチンコの殺し合い、血が超出る)は絶対に書けなかったと思う。感謝してもしきれない。

▼ゲスト原稿を依頼した山本情次先生へのオファーの内容としては「財前時子様を本物のサディストとして書いてください、ぼくは血が見たいんです」みたいな感じで、梗概とキャラクター一覧、背景となる設定等を書き殴った数千字の企画書(その場の勢いのまま数十分で一気に書いた)を送りつけて速攻話が決まった感じでした。「極星(ポーラスター)」という暗号名と食人設定、部下のグッドルッキング超人傭兵団の暗号名(すべて豚の可食部位の仏語男性名詞読み)を考案したのは山本情次先生っす。まさか、服部○應先生があのにこやかな顔で生きた人間を調理し、繊細なエスコフィエの古典料理として時子様に振る舞う様が見られるとは思いませんでした。感無量です。

▼設定先出しですが、「再開発」で一ノ瀬志希の「農園」をメチャメチャに破壊したのは時子様です。4巻ではこの両者にバチバチぶつかり合って頂きます。2巻3巻の比ではない程の血が流れるぞ〜〜〜〜〜〜。

乃木坂46伊藤万理華さんがグループを卒業した。彼女に対しては諸々万感の思いめいたものがあるので、また改めて書きます。やっぱりぼくは表現すること/されることに対して思い入れやこだわりを持っているアイドルさんが好きなんだと思います。顔とか、容姿とか、それ以前に。

▼1月はDJイベント2本に出演した。うち1本はゲストDJとしてオファーを頂いた。ぼくみたいな同人屋の片手間に趣味程度でDJをやっている人間に対し、まことにありがたいことだと思う。

▼主催陣の1人として関わった『HOUSE TRAIN』(恵比寿BATICA・1/12(金))はDJ YOGURTさんとokadadaさんをゲストDJにお招きした。イベントを打つに至る経緯については、以前Twitterに詳細を書いたのでそちらを参照して欲しい。

▼ぼくらとしては相当気合いの入ったブッキングだった。当たり前である。たかだか普段会社員をやっているにすぎない主催陣三人がなけなしの月給を出し合い、BATICAを一晩借り、あのDJ YOGURTさんとokadadaさんをゲストDJにお招きするのである。どれくらい大変なことをしたかというと、喩えるならば、小説同人誌の表紙イラストのために市川春子先生へオファーを出し、本文ゲストとして平山夢明先生へオファーを出すくらいのことをした、と捉えて貰って構わない。これは大袈裟な喩えでも何でも無い。

▼ここには詳細を書けないが、ゲストDJの候補として他にも数多くの名前が挙がった。どれもこれも実現性度外視で、とにかくこのDJとこのDJの組み合わせが見たい、という名前を出し合ったのだが、その組み合わせの中において最も観たい組み合わせであり、それがゆえに最も実現性が低いと見積もっていたのがDJ YOGURTさんとokadadaさんの組み合わせだった。「いや〜〜〜、いうてもDJ YOGURTさんとokadadaさんすよ? ぼくら程度でそんな大それたイベント打っていいんすかね……?」という具合である。が、実現した。そんでもって凄いパーティーになった。とりわけ、深ーく深ーく潜っていくようなDJ YOGURTさんのセットからokadadaさんが作る明け方のディープな流れに至る過程が大変に素晴らしく、朝が来ることが心の底から惜しいパーティーなどいつ以来だろうか……という気分にさせられた。普段クラブに行かない友人が2Fのフロアで身体を揺らしながら「いや〜〜〜、身体が勝手に動くんすわ……」みたいなことを興奮気味に口走っていたのがやけに印象的だった。なぜ巨人は巨人たりえるのか? というのを身を以て知った一夜だったと思う。また来年にでもやりたい。パーティーが終わってしまったのであれば、もう1回パーティーを開けばいいのである。

▼朝5時45分。2Fのフロアにあって、誰も帰らない客を前にokadadaさんが最後の1曲としてかけたシンディ・ローパーの『Time After Time』が本当に忘れがたい。終わって欲しくないパーティーの終わりにかかる曲として、あれ以上のものは中々存在しないと思う。


Cyndi Lauper - Time After Time

▼1月分のDJミックスを録った。誰に聴かれなくても欠かさず毎月録り続けていくことが重要だと思い、月次でアップロードを続けているのだが、今月分の選曲において念頭に置いたのは、やはり『HOUSE TRAIN』(恵比寿BATICA・1/12(金))で観た景色そのものであり、また年初の青山OathにおいてKatsuya Sanoさんが披露していた明け方4時から7時にかけてのDJである。

▼Oathの窓からオレンジ色の朝陽が差し込んだ瞬間、Katsuya SanoさんがChunk-A-Nova (Red Dog Mix)をかけた瞬間は忘れがたい。アシッドハウス〜ディープハウス〜テクノをゆらゆらと行ったり来たりしつつ、夜が明けた瞬間のChunk-A-Nova (Red Dog Mix)である。暗いトンネルを抜け、ふとした瞬間にパッと光が差す瞬間というか、そういえばぼくがいちばん好きなDJってこういうDJだったなという原初の気持ちを思い出した。実に貴重な瞬間だったように思う。最後かけたChunk-A-Nova (Red Dog Mix)は、あのときのそんな気持ちを込めたつもり。 

▼TrackList

01. Soledrifter - Rhythm in My Soul [Inner City Records]

02. Dirty Culture - After the After [Affin]

03. Lone - From a Past Life [R&S Records]

04. Lone - Saturday Night (DJ-Kicks) [K7 Records]

05. Marquis Hawkes - Feel The Music [Houndstooth]

06. Soulphiction - When Radio Was Boss [Pampa Records]

07. Halo Varga - Future! [Hooj Choons]

08. Marquis Hawkes - The Phoenix Part 2 [Aus Music]

09. Leon Vynehall - Blush [Running Back]

10. Earth People - Dance (Kerri Chandler Centro Fly - Jerome Sydenham Special Edit) [Ibadan Records]

11. Joss Moog - Yo [Robsoul Recordings]

12. TAXI C.A.B. - Chunk-A-Nova (Red Dog Mix) [House Jam Records]

13. Wayne Snow - Nothing Wrong [Tartelet Records]

 ▼昨年12月、昔聴いていたジャズの音源を使い、だらっとミックスを2時間録った。手前味噌だが結構気に入っているので聴いて貰えると非常に嬉しい(全部聴かなくて良いので、1:15:00〜のスタン・ゲッツとケニー・バロンの演奏だけでも聴いて欲しい、物凄いので)。

▼自宅にあるPioneer社製CDJ-2000nexus × 2台を使ってビル・エヴァンスやらオーネット・コールマンやら、果てはアルバート・アイラーの音源をかけるのは中々新鮮な体験だった。いや、普通2000nexus使ってアルバート・アイラー聴かないでしょ。

▼その昔、FM Yokohamaの土曜深夜帯(AM3-5時)にジャズのみをひたすら2時間垂れ流すだけのフィラー番組があった。ジャズクロニクルとかいう番組名だったと記憶している。ミックスを録りつつ、ぼんやりと意識していたのはあの番組の空気感。

 ▼思えばぼくのミックスに対するフェチの大半は、あの辺の深夜のフィラー番組と、それからNRK MusicもしくはZ RecordsのミックスCD、その両者によって涵養されてきたように思う。とりわけフィラー番組から受けた影響は大きい。夜明け前の静寂の中、ラジオから淡々と音楽だけが洩れ聞こえてくる、あの朝までの時間が大好きだった。いまも好きっす。